柴本にメールしなきゃ……。


私は携帯を取り出すために鞄を開けた。


咲哉さんが誕生日プレゼントにくれたキャンディーが見えた。


"誕生日プレゼント。お誕生日おめでとう。穂乃ちゃん……"


頭の中に咲哉さんの言ってくれた言葉が浮かんだ。


咲哉さんが初めて"穗乃ちゃん"と呼んでくれた。


咲哉さんの優しい笑顔。


心にポッカリ穴が空いたような寂しい気持ちが急に襲ってきた。


私は柴本に



【今日は疲れたから……ゴメンなさい】



と、メールを送った。


メールを送った後、咲哉さんにもらったキャンディーを開けて、ひとつ口に入れた。


美味しい……。


私はキャンディーを舐めながら、咲哉さんに貸してもらった傘をさして駅を後にした――。