阿川さんが帰って来た。
手にはコンビニの袋。
本当にコンビニに行ってたんだ……。
「ただいま」
「お帰りなさい」
"ただいま""お帰りなさい"と誰かと言い合ったのは……いつ振りかな……。
阿川さんは彼氏でもないのに……。
そう言い合えたのが凄く嬉しかった。
キッチンにいた阿川さんがリビングに戻ってきた。
テーブルに置かれた2つのお皿。
そのお皿には、イチゴのショートケーキが乗っていた。
「これ……」
私はそう言って、阿川さんの顔を見た。
「バースデーケーキとは言えないけど……バースデーケーキの代わり」
阿川さんはクスッと笑う。
阿川さんが私のためにバースデーケーキを用意してくれた。
誕生日にケーキを食べたのなんて何年振りかな……。
私の目に涙が溜まっていく。
あふれた涙でケーキが歪んで見えた。
「ありがとう」
「食べよ?」
「……うん」
私はソファーの上で、抱えてた膝を下におろした。
ケーキを一口食べる。
美味しい……。
どんなに有名なスイーツのお店で売ってるケーキよりも、阿川さんが用意してくれたケーキは凄く美味しかった。



