阿川さんが持ってきてくれたマグカップを包み込むように持って、紅茶を一口飲んだ。
「彼氏って……前に手話教室に迎えに来てた人?」
「……はい…」
見られてたんだ……。
私はマグカップをテーブルに置いて俯いた。
阿川さんは何でこんなことを聞いてきたんだろう……。
「ゴメン……」
呟くように謝る阿川さん。
「いえ、いいんです…。遊びだったんです……」
隣に知らない女の子がいて……。
"最初から遊びだったんだ"
"お前みたいな女、本気で相手にするわけねぇじゃん"
翔の言った言葉が頭の中に蘇ってきた。
「えっ?」
「私とは最初から遊びだったんです……」
「そっか……」
阿川さんはそう言ったきり、テーブルに目線を落としていた。
「でも誕生日の日にフラなくてもいいと思いません?」
私は顔を上げて、泣いてた顔を無理矢理、笑顔にして言った。
「誕生日?」
阿川さんは目線をテーブルから私に移してそう言った。
「私、今日が18歳の誕生日なんです…」
誕生日にフラれるなんて……。
しかも翔の隣には知らない女の子がいた。
最悪だ……。
そう思うと、涙が次から次へとあふれてきて、床にポタポタと落ちていった。



