阿川さんの車は、コンビニの駐車場に止まった。


阿川さんは後部座席に置いた鞄を取って、鞄から財布を出し、中から1万円札を出して、



「これで必要な物買っておいで」



と、私に1万円札を差し出した。



「えっ……」



私は驚いて、1万円札を見つめたまま、思わず声が出てしまった。



「いいから」


「でも……」



本当に受け取っていいの?



「今日は雨が止みそうにないよ?服や髪が乾くまで時間かかるから帰りも遅くなる。お家の人が余計に心配するんじゃない?それにこのままだったらホントに風邪ひいちゃうよ?」


「……………」



私は何も言えなかった。


私がついた嘘を阿川さんは信じてるのかもしれない……。



「俺んち、すぐそこだからさ…。制服を洗濯してあげるよ。乾燥も出来るし。だからこれで必要な物買っておいで?」



阿川さんはそう言って、私の手に1万円札を握らせた。



「あの……」



私は顔を上げて、阿川さんを見た。



「キミが心配するようなことはしないから安心して。俺、そこまで常識ない男じゃないからさ」



阿川さんはそう言って微笑んだ。


この人は、何でここまでしてくれるんだろう……。


どうして私に優しくしてくれるの?


私、バカだからさ……そんなに優しくされたら……。