えっ……。
降り続いていた雨が止んだ。
でも雨音は耳に聞こえてくる。
俯いていた頭を正面に上げた。
私の前に足が見える。
「………えっ…」
私は顔を上げた。
そこにいたのは……。
「阿川……さん…」
私は目を見開いて阿川さんを見た。
どうして、阿川さんがここにいるの?
私はベンチから立ち上がった。
全身びしょ濡れで、水分を含んだコートが重たい。
阿川さんの顔を見ると、また泣けてきそうだった。
唇を噛みしめ涙が出るのを堪えた。
「神崎さん……何で……」
阿川さんが小さくそう呟いた。
「………彼氏に……」
「えっ?」
「彼氏に…フラれたの……」
なぜ、阿川さんに翔にフラれたことを言ってしまったのかわからない……。
私はそれだけ言うと、涙が一気にあふれてきた。



