手話教室が始まった。
それぞれ皆の前にケーキと紅茶が置かれている。
ケーキは先生の手作りらしい。
ケーキと紅茶を頂きながら手話のレッスンが続いていく。
皆が私のことを「穗乃ちゃん」と呼んでくれて、私も皆の中にすぐに溶け込むことが出来た。
でも……。
阿川さんだけは、何故か"穗乃ちゃん"と呼んでくれない。
"神崎さん"と名字で呼ぶ。
目も合わせてくれない。
「阿川さんも名前で呼んで下さい」
私は思いきって、阿川さんにそう言ってみた。
阿川さんは「うん」と言ってくれたけど、やっぱり"神崎さん"と名字で呼ぶ。
私、嫌われちゃったのかなぁ……。
そんなことを思いながら窓の外を見ると、ここに来た時より更に激しく雨が降っていた。



