咲哉さんのマンションに帰った。
車から部屋に入るまで、咲哉さんとは一言も言葉を交わしてない。
ただ、部屋に入るまで、ずっと手を握ってくれていた。
咲哉さんは私をソファーに座らせるとキッチンに行った。
マグカップに入った温かい紅茶を持って、リビングに戻って来ると、マグカップをテーブルに置いて私の隣に座った。
咲哉さんの手が私の手に重なり、ギュッと私の手を握った。
「穂乃ちゃん?何があったのか話して?」
俯いている私の顔を覗き込むように優しくそう言った。
「………………」
「穂乃ちゃん?」
私の目から大粒の涙がこぼれ、膝の上にポタポタ落ちていた。