先生が出してくれた椅子に座ってると、次々と生徒さんが教室に入って来た。


スーツをだったり、私服だったり。
制服の人は1人もいない。


高校生の生徒は私1人だけかな?



「あとは阿川くんだけね」



先生がそう呟いた。


まだ生徒さんがいたんだ……。


そんなことを思ってると、玄関のチャイムの音が聞こえた。


先生が教室を出て行く。


しばらくして、先生の後ろを付いて1人の男性が入って来た。


彼をチラッと見た。


長めの黒髪をワックスで無造作ヘアにして、銀縁のメガネをかけてる。
メガネの奥に見える二重瞼のクリッとした目。
筋の通った高い鼻。
スーツを着て、長身で細身で……。


大学生かな?
スーツを着てるってことは……就活中?


彼と目が合って、私は彼にニッコリ微笑んだ。


でも彼はすぐに私から目線を逸らしてしまった……。


何で彼は目を逸らしたんだろう……。


変な人だな。