「あれ? 輝おはよう」

「おはよ」

シャワーを浴びて、濡れて、結びにくくなった髪の毛と格闘してた時に、楓が部屋に入ってきた。

「今から起こそうかと思ってたのに……」

「雨の音で目、覚めた」

そんなに酷い雨じゃないけど、ポツリポツリとは音がしている。

「輝は耳が良いね」

「……偶然だ」

「前もそう言ってたよ?」

照れ隠しか本当にイラッときたのか、素っ気ない輝を楓がクスクスと笑う。

「……じゃぁ、楓の耳が遠いんだ」

「はいはい。そういう事にしておきましょう。……髪、やってあげるからゴム貸して」

輝に渡されたゴムを受け取り、盛大に濡れた髪の毛を楓が見て、やれやれと笑う。

「髪の毛は乾かさないと結びにくいし、大変なことになるよ?」

「……知るか」

せっかく綺麗な髪を持っているのに、当人がこれではな……。