涼が女装をして本邸を歩く。それだけで辛いのに。

「今日のお着物は素晴らしい……」

「さすが朱牡丹の跡取り……」

「お顔が美しいわ……」

涼が通る度に皆が囁く。でも涼に直接話し掛ける者は誰一人としていない。

涼の女装には意味がある。

「この者は女性かも男性かも分からない。それに未成年である、故に意見を求めることは許されない」

という無言の訴え。

それから叔父さんの。

「涼に女装をさせたときは必ず犯す」

という強制的なもの。

どちらの意味も涼の意見を全く無視したもの。


俺には賛成できない。