プラチナの誘惑

たまたまだとしても、些細な気持ちだとしても、昴と同じ気持ちで夜景を見る事ができるこの時間が、とても大切なひとときに思える。

…昴には、なんでもない
時間だとしても…。

「哲人、ちゃんとベッドで寝ようよ」

困り果てたような声が聞こえて振り返ると、逢坂さんがソファーで小さくなって寝ている子供に向かって声をかけていた。

毛布をかけられて寝ている男の子は、ぶつぶつ何かを言いながらも、逢坂さんにすりよって首に腕をまわしながらだきついた。

「母ちゃんおかえり」

「ただいま」

ほとんど目はあかないままでそう呟く男の子は、安心しきったように逢坂さんに抱かれる…。

ゆっくりと男の子を抱き抱えた逢坂さんは、ソファに腰掛けた。
ひざ枕をして寝かせた男の子の髪をすきながら見つめるその瞳は、まさに母親…。