柊さんのあとについてリビングに入った途端に目に入ったのは、限りなく
360度に近いくらいに見える一面の夜景。
町並みの中に光る色とりどりのあかりに目を奪われながら、窓に近寄ると
現実とは思えない空気感に包まれた。
「すげえだろ?
現実とは思えないよな」
ふっと背後に立つ昴の言葉に驚いて見上げると、軽く笑う視線が夜景を見ていた。
現実とは思えないよな
夜景を見て同じ気持ちになった昴が、何だか今までより近くに感じて嬉しくなる。
子供の頃からずっと、姉さんの後ろにいて。
比べられる以前に諦められて。
私の気持ちや意思は汲み取ってもらえなかった。
自己がまだ完全に確立していない頃からそうだったせいか、大人になっても。
自分の気持ちがそれほど大きな意味を持つものだとは思えなくて、たまに姉さんと考え方が一緒だった時だけ、安心して想いを口にする事ができる。

