プラチナの誘惑

「明日の買い出し、手伝おうか?」

何気なく言ってくれるけれど、毎日遅くまで残業している壮平に無理を言うなんてできない。

「ううん。買わなきゃいけない品物は決まってるし、昴が車出してくれるって言ってたから大丈夫」

「…そうか。
会場のアマザンホテルには事前に持ち込む連絡は入れてるから。

真田さんっていう男性が担当。

大変だろうけど頼むな」

「うん。ありがと」

軽く笑って、逢坂さんがテーブルにそっと置いてくれたウーロン茶を飲んで一息ついた途端、携帯が鳴った。

近くに置いてある鞄から携帯を取り出すと、表示は昴。

慌てて通話ボタンを押しながら、

「壮平、ちょっとごめんね。昴から…ちょっと出てくるね」

謝りながら席を立って座敷から出ようとする私に気づいた何人かが

「彼氏から電話かー?」

「早く戻って来いよ」

と大声で叫んでいて、一気に酔いが回ったような気がした。