「昼からの打ち合わせに資料10部頼む」

はっとした私の背後から部長の焦った声が聞こえて我にかえった。

寝不足のせいと…きっと新聞に出ていた記事を見たせいで、少し心が揺れている。

机の上にある朝刊に出ていた記事。
社会面の写真入り記事は姉さんに関するもので…。

産後、弁護士として復帰するという内容を読み続けるうちに、落ちていく気持ちを抑える事ができなくなった。

やり手弁護士として大きな事務所でキャリアを積んできた姉は、結婚を機に仕事から離れていたけれど、今月からは小さな事務所で働きはじめた。

女性の労働に関する問題を専門にしていきたいと話す姉の顔は輝いていて。
今まで何度となく見た瞳の光が眩しい反面、私にとっては…。

いつまでも追いつく事のできない輝ける壁。

仕事、結婚、出産…。

両親の期待と愛情を独占され続けてきたという寂しさの象徴。

そして…自分の居場所をたくさん持つ姉をうらやましく思いながら生きている私の居場所はまだ見つからない…。