プラチナの誘惑

「ふーん。
そんなに俺が好きなんだな?

じゃ、遠慮なく。
今まで無駄にしてた時間分もまとめて愛してやる。
籠に入れて俺の側に置いておくから。

…もう逃がさない」

ニヤリ…。
浮かんだ悪戯めいた笑みに一瞬たじろいだ私に。

「こんな事もするし」

突然降ってきた唇。
軽く触れるだけですぐに離れたけど…。

「す…昴…こんな朝から…外で…びっくりするじゃない」

あまりの恥ずかしさに、その場にいられなくなって…顔を両手で覆いながら、昴を放って歩き出した。

びっくりした…。
あんなキス…それにあんな甘い言葉の洪水…。
今まで言われ慣れてなかった分一気に浴びたような感じで…。

嬉しいんだけど…。
照れる…。

駅に向かってゆっくり歩きながら、背後の昴を振り返ると。

いつの間にかすぐ後ろにきていた昴に腕を捕まれた。

「…っ昴」

恥ずかしさの抜けないままに見上げると

「逃がさないって言っただろ?」

くすくす笑いながら。

本心から幸せそうな声で。

「とりあえず、創立記念パーティーであのプラチナリングが当たんねえかな。速攻引き換えに行くのに…。
あ、当たらなくても、今日買いに行くからな。

彩香の家にも挨拶行かなきゃだし…俺の親父達にも言っとかなきゃだし。

…ま。彩香を手に入れる為ならなんてことないな」

そんな言葉をぶつぶつ言いながら。

嬉しそうに歩く昴の手から、私にも幸せな気持ちが伝わってくる。