プラチナの誘惑

私の腕を掴むと、美術館の奥に続く扉へ向かおうとする昴…。
横顔には呆れたような…諦めたような…
初めて見る表情が浮かんでる。

「どうしたの?…あの人達知り合いじゃないの?あ…走ってきたよ…」

ちっと舌打ちする昴も走りだそうとしたと同時に

「待ってよっ。紹介してくれてもいいじゃない」

美術館には合わない大きな声をあげながら走り寄ってきた女の人は、昴に掴まれてる腕とは反対側の私の腕をがしっと掴んだ。

「逃げずにさっさと吐きなさい」

ふふんと睨みをきかせる瞳は、綺麗な顔との相乗効果で更に魅力的で。
近くで見ている女の私でも惹かれずにはいられない。

「…あのなぁ…。
何で二人して来るわけ?」

振り向いて、ため息とともに出てくる言葉は何だか力無く弱い…。
完全に、この綺麗な人に白旗あげてる…。

「何でって決まってるじゃない。未来の妹に会いに来たのよ。ね?」

「ね?って…。
はぁ…。
頼むから暴走しないでくれよ。
彩香は慣れてないんだからな…びっくりして…
え…?
…何で笑ってる?」

私の顔を見て、驚いたように眉を寄せた昴は、

「さっきまで泣きそうな顔してたくせに…」

訳がわからないとでもいうように首をふった。