プラチナの誘惑

「何で?…何で気づいたんだ…?」

腑に落ちないというように、聞いてくる昴の言葉はもっともで。
単なる同期以上の付き合いのなかった私だし…。
いきなり気づいたって言われても説得力ないよね…。

でも、反対に。
昴だって…同じなんだけどな…。
いつから私を好き?

そんな私の感情が顔に出たのか、大きく息を吐いた昴は

「ニューヨーク。美術館で、今みたいに一生懸命に絵を見てる彩香に惚れたんだと思う…。
俺の事も同じように見て欲しいし愛されたいって…ずっと思ってる」

固い声は、昴の緊張感なのかな。
逃げる事もできない強い視線と一緒に与えられる昴の言葉。

更に私に強さに似た温かさを落としてくれる。
いつも昴の思うがままに感情を揺らされている弱気な私に、力がわいてくる…。

思わずにっこりと笑う私…。

「でも、忘れられない女の人がいるんでしょ?」

ほんの少し拗ねた口調で言い返した…。

ずっと気になって仕方なかった事を、こんなに強い気持ちで…軽い口調で昴にずばり聞けるなんて想像もしてなかったのに。

昴の心の内にある不安や戸惑いに触れた途端に一瞬にして笑いながら話す私に変わってしまった。

目を見開く昴から聞かされる言葉がどんなものにせよ、受け止められる自分を信じてるから。

だって…私達には、お互いが大切で、愛し合える明日があるから。

その明日がある幸せは、何にも代えがたい事だって柚さんと野崎さんから教わった…。

だから、昴に忘れられない女の人がいても…今私を一番に愛してくれるならそれでいい。