プラチナの誘惑




感情の波をあまり見せない彩香が、自分自身で抑える事ができないように強く抱き着いてくるのを嬉しさよりも戸惑いを感じながら抱き返した…。

『好きよ』

『どこにも行かないで』

俺を喜ばせる言葉をつぶやいてはしがみついてくる彩香。

…こんなに混乱している彩香を初めて見る…。

「彩香…」

俺が抱きしめる強さに比例して、少しずつ落ち着きを取り戻す彩香が愛しくてたまらなくて。

病院の中だという事も忘れて…。
俺達は抱き合っていた。

彩香がこうなる事をわかっていて、小椋さんと相模さんは俺に彩香を迎えに来させたんだろうか…。

普段の淡く微かな起伏しか感じさせない彩香。

今の彩香を想像させる要素なんて見せてるとは思えないのに、俺を彩香の元へ行くようにするくらい…。

柚さんに会う事は彩香にとってかなり激しい衝撃を受けるものだったのか…?

そしてそれは。

柚さんの容態が芳しくないという事じゃないのか?

明日の出産のリスクが高いという事は知ってるけれど。

俺の腕の中で涙を流す彩香を更に抱き寄せて、どうしようもなく切ない気持ちをただただ分け合った。