プラチナの誘惑

女性の声に振り返って見上げると、

「あ、久しぶり」

逢坂さんが嬉しそうに声をかけている…優美さん。
最近まで本社の受付をしていた綺麗な女性。
レモンイエローのワンピースを着た姿は、この
『定食屋さん』にはあまり馴染んでいなくて目立っている。

「優美ちゃんに教えてもらってからずっとこの店に来るのを楽しみに本社に来てるのよ」

にっこり笑う逢坂さん。
優美さんとはかなり親しそうに見える。

嬉しそうに笑う優美さんも、逢坂さんに同じような親しさを返している。

本社の受付だった優美さんと営業部の逢坂さんが、こんなに近い関係って不思議な気がする。

二人を見ながら考えていると、それまで逢坂さんと話していた優美さんの視線が私に向けられた。

「宣伝部の森下さんね。
逢坂さんと一緒って珍しいわね」

明るくはっきりした声。
思っていた雰囲気と違ってサバサバとしたトーンの彼女に少し驚いた。
今まで持っていたイメージは、どちらかというと高慢さを隠さないきつめの女性だったけれど。

目の前の優美さんは、誰にでも優しく接する気さくな女性…。

その事に気づいて、自分の中の妙に後ろめたい気持ちが顔を出す。