プラチナの誘惑

どうしてこんなに淡々としたメールを送ってくるんだろう。
部屋に女の人がいて、私と鉢合わせしたのに。

そのあと私は部屋から飛び出して電話にも出ないのに。

どうしてその事に触れずに、こんな平和なメールを送ってくるんだろう。

…何がなんだか…わからない…なんて。
そんな風に思いながらもどうしてかわかってしまう自分も確かに感じる。

昴の本当の気持ちを確実に理解できているって言い切れないけれど…。

慌てた言葉を連ねたメールを私に送って私の不安を煽るよりも、何気ない言葉を普段と変わらないトーンで伝える事で。

『誤解する事も心配する事もないのに』

って私に教えようとしているんじゃないかな…。

私の気持ちを楽にする為の私の勝手な思い込みかもしれないけれど。

穏やかに、心をフラットにして。
昴と過ごしたこの密な数日の二人の空気を考えると。

『ばぁか』

と笑う昴の顔が浮かんでくる。

そして…。
ソファーに突っ伏して、笑いを押し込んでしまう位力の抜けた私。

ずるい…っ。