プラチナの誘惑

「忘れられない人がいるって…本気で好きな人がいるって言ってた…」

そうつぶやいてカーペットに座り込んでいた私の隣に、同じように座り込んだ日和は

「本気の女って彩香の事じゃないの?」

慰めるように私を見つめた。
何か思いあたる事があるのかないのか…私には日和の言う根拠はよくわからない。

「じゃ、忘れられない女って?」

「うーん。そんな話昴から聞いた事も感じた事もないんだけどな」

首を傾げる日和は、私の気持ちを落ち着かせる為だけにそう言ってる感じじゃなくて、本気でわからないらしい…。

「ま、彩香が気にする気持ちもよくわかるよ…」

「…日和?」

「忘れられない女がいる人を好きになったら…つらいだけだもん」

だぁっと訳のわからない声を出しながらカーペットに俯せに寝転んだ日和。

気のせいか、少し手が震えてるように見える。