プラチナの誘惑

どうして今、そんな話をするのか理解できない俺は、芽実さんの向こうに立つ兄貴を見た。

俺の戸惑う様子をおかしく思ったのか、口角を上げて肩をすくめている。

芽実さんの話す言葉の意味をわかってるってことか?

しばらく何も言えずにいると、兄貴の腕にだきついた芽実さん。

いつも以上に優しく明るい笑顔を見せた。

「本当に、会社の経営とか付き合いとかに関わるなんて嫌でたまらない。

憂鬱で楽しくないし逃げ出してしまいたい。

でも、それを受け入れなきゃ奏の側にいられないなら、どんなに大変でも
頑張れるんだ。

奏と一緒にいられる事以上に望む事なんてない。

…大好きな人と結婚できて愛されてるんだからね、私の人生引き換えにしても後悔しない。

だから、私は大丈夫。

心配しなくてもいいからね」