プラチナの誘惑

苦しそうに顔を歪めながらも、そう言い切る兄貴。

社長になるべく育ってきて、あらゆる物を諦めて我慢しながらの今までを振り返ると、俺も切なくなる。
次男として、家の裕福な部分だけを享受して、会社の責任は放棄して生きている俺に文句も言わず。
設計の仕事に就いた俺を温かく見守ってくれた。

もともと、親父にも気に入られていた芽実さんとの結婚は何の問題もなかったけれど、兄貴の立場優先となる結婚を受け入れた芽実さんにとっては諦める事はかなり多かった。

「芽実のストレスもわかってるし…自由にしてやりたいけど、あいつから離れるなんて無理だしな。
わかってもらうしかないな…」

何度も考えて、そう結論を出したんだろうその言葉は、俺にはかなり重い…。

「わかってるよ」

え?

突然の声に顔を上げると、両手に紙袋を抱えた芽実さんが笑いながら立っていた。