芽実さんを、兄貴と住む家に送り届けると。
珍しく家にいた兄貴が出てきた。
普段は国内外問わず、忙しく飛び回っているせいか、滅多に顔を合わせる事もない。
今日会うのも3か月ぶりくらい。
帰ってきてすぐなのか、まだスーツのまま。
俺と背丈も顔もよく似ているけれど、俺よりしっかりとしている次期社長。
「奏っ」
助手席から飛び出して、胸に飛び込む芽実さんを受け止めた兄貴は、苦笑しながら。
「…また昴のところに逃げ出してたんだな?」
軽く芽実さんの額を指で弾いた。
どちらかと言えば冷たい印象の兄貴が、唯一心を開いて表情を崩す事ができる相手…芽実さんに向ける愛情は半端なくて、俺には軽くうらやましくて…妬みも少し。
「いつ帰って来たの?」
兄貴に抱き着いたまま、甘えるように聞く芽実さんだって兄貴がいなきゃ生きていけないくらいに兄貴にべた惚れ。

