プラチナの誘惑

「昴帰ったの?
夕飯できてるから早く
お風呂に入ってよ。

あ、私が持ってきてたシャツ使ったの?

未発表の商品だから持ち出し禁止だからね」

キッチンから聞こえてくるはきはきとした声。
視線を上げると、細身のジーンズにシャツを来た綺麗な女の人が顔を覗かせていて。

私と目が合った瞬間に、驚きで大きな瞳が更に大きくなって…。

「…あら…?」

言葉がうまく出ないのか黙って私をじっと見ていた。

自分勝手な解釈なのか…
妙に温かい瞳の彼女…。
私よりも少し年上に見える。

長身で小さな顔はまるでモデルのようで、同性の私でも惹かれてしまう。

昴が本気だと言っていた人はこの人なのかな…。
あはは…。

私なんて足元にも及ばない…。

そう感じた瞬間…体中から力が抜けて、涙だって止まった。

「ごめんなさい…。
すぐに、昴来ますから」

足元に視線を落としながら、早口でそう言うと。

ゆっくりとドアを閉めた。

私が降りたままに待っていてくれたエレベーターに飛び乗った途端、体中が震えて痛くて…切なかった。