プラチナの誘惑

ドアを開けたまま、まとまらない頭をなんとか整理しようとするけれど、かかっているネームプレートも昴の部屋だってちゃんと教えてくれるし。

誰が部屋にいて…何をしているのか。

そらしそうになる気持ちを、ぐっと強い意思で呼び戻して…受け入れる現実。

恋愛に慣れてなくても、この状況がどういう事なのかなんてわかってる。

きっと、昴の本気の人が来てる…。
直感だけど…。

夕べ借りたシャツやインナーが頭に浮かんでくる。それと同時に浮かぶのは涙…。

はは…。涙なんて簡単に出るんだな…。

調子にのってたこの半日…。

合鍵をもらって有頂天になって、昴にもう一度抱かれる事を夢見ていたのはほんの数分前なのに。

一瞬にして幸せな気持ちが崩れてしまう経験なら何度もしたはずなのに。

いつまで…あと何回経験すれば、幸せになる難しさを受け入れる事ができるんだろう。