プラチナの誘惑

一度決めたら絶対に変えない日和。
逆を言えば、口にする前に考えに考え抜いたって事。
お見合いをすると私に言う前にはきっと、相当悩んだはずだから…もう私の言葉に揺れるなんてないはず。

「そっか…。
いい縁があればいいけど。もし気に入らなかったら遠慮せずに断っていいからね」

「わかってるよ。
でも、もしすごくいい人でも譲ったりしないからね。
やっぱりお見合いしておけば良かったなんて言うのはなしだから」

笑い声は、もう普段の日和の声。
彼女の真意を正確に汲み取る事は今はできないけれど、せっかくお見合いするなら、日和にとって幸せな未来に繋がればいいなと思う…。

忙しそうな日和を引き止めるのも悪くて

「じゃ、私は帰るから…」

日和に別れを告げてその場を離れようとした時、
ちょうど駐車場になっているスペースに、一台の車が入ってきた。

シルバーのセダンからおりてきたのは、見るからに仕立てのいいスーツを着た男性。

「野崎さん…」

え？

日和の言葉に驚きながら見ると。
テレビや新聞で目にするより格段に格好いい…。

野崎健吾さんだった。