プラチナの誘惑

仕事で現場にいるらしい日和に悪い気がして、慌てて電話を切ろうとすると

『するっ。

お見合いするから。

相手の写真やら持ってきて。
明日はなにがなんでもお見合いするから』

いきなりの激しい口調に驚いて、何も答えられずにいると。

『彩香の家から近い、園が丘の現場にいるから。
持って来て。
野崎邸だからね』

「…わかった…」

そう言うしかできないくらいに勢いのある言葉を続けられた私は、頷くだけ。

『お昼には現場離れるから早く持ってきてね。

…あ。

聞くの忘れたけど、どうして彩香はお見合いやめたの?』

「…っ。それは…」

『一度決めたら途中で
絶対にやめたりしない彩香なのに、どうしてやめたの?

それも前日になんて彩香らしくないよ』

単純に不思議に感じたんだろうな。