プラチナの誘惑

「…いいの?本当に…」

全く考えていなかった答えは、あまりにも予想外で、うまく言葉が続かない。

「…いいわよ。
彩の人生だから、ちゃんと自分で決めればいいんだから。
彩のことだから、考えに考えた結論でしょう?」

「あ…うん。そうだけど」

「だったら何も言わない。彩が地に足をつけて自分の人生を生きているのは高校受験の時から理解してるからね…。

望より頑固だし」

ふふっと明るく笑う母さんの口調はいつもと同じではっきり気持ちいい。
テンポよく言い切る勢いも聞き慣れたものだけど。

母さんの話す言葉が、私にとって優しく感じられるのはどうしてだろう…。

『彩の好きにしていい』

って言われても、今までならきっと。
突き放されたと受け止めて落ち込んでたと思う…。

でも、今は。

同じ言葉をかけられても
まるで、母さんの愛情に包まれて温かい膜が周りに張り巡らされた気もしてしまう。