「くそっ」
リビングのテーブルに
置かれていた手紙を思わず握り潰しそうになる。
彩香が書いたんだと気づいて、我慢するけれど、
『着替えに戻ります。
お昼頃にまた来るから
起きて待ってて
彩香』
何で俺が起きるまで待たないんだ。
腕の中にいると思っていた温かさの消えた後のベッドはやけに冷たくて広すぎる。
普段は一人で眠るしかないこのベッド。
この部屋に入った女さえ
母さんと兄貴の嫁さんの芽実さんだけ。
勝手にしょっちゅうやって来ては掃除や料理をしてくれる芽実さんのおかげで、快適に一人暮らしも送れているしなんの不満もなかった。
そんな俺には女をこの部屋に連れてくる気持ちはなくて、身体の欲求を満たすのはもっぱら女の家かホテル。
事が終わればすぐに帰るのも自由に、女には身体だけしか求めずに。

