プラチナの誘惑

何とか顔を上げて見る昴の表情は、悪戯気味に口元を上げている。
声も真剣さよりもふざけた軽さを感じさせているけれど…。

何かを求めているような目は私に向かって強く…
そして緊張している。

背中にある手の強さも感じて、私の中にも緊張感が高まっていく。

抱きしめられているこの状態を…冗談にする経験もないし、受け入れる勇気があるのかもわからない。

「…昴…私…」

慣れないこの状況。

男の人の部屋で二人きりなんて私の今までの人生にはなかった。
恋愛以前に、自分をちゃんと持って、誰かの影でない未来を作る事の方が先決だったから…。
姉さんの影響のない日々を着実に作る事しか考えられなかったから。

今…昴に抱きしめられている私は一体。

どうしたらいいのか
どうしたいのか

混乱した心が溢れて…
何も言えなくなった。

ただ、昴の鼓動を直接聞くと…なんだかホッとした。