プラチナの誘惑

さっき逢坂さんの家で、柊さんと話していた昴。

私に背を向けていて全部は聞き取れなかったけど
昔の彼女の結婚式に出るのか聞かれて

『出るわけないでしょ』

と真剣に答えていた。
そして、

忘れられない?

って聞かれた時には

『忘れられない女ですからね』

と軽く笑って言っていた。

リビングの入口で聞いてしまった私は、その言葉に鈍い痛みを感じる寸前に。

持っている感情の扉を一気に閉じた…。

そしてきっと、普段と変わらない表情や声で笑ってたんだろうと思う。

閉じた感情の向こうに逃げていた私の記憶は曖昧で、逢坂さんの家を出たのも、昴の車に乗り込んだ事も覚えていない…。

気づいた時には昴の車の助手席でぼんやり景色を見ていた…。