プラチナの誘惑

少し距離を作って昴の隣に立つと、一面に広がる夜景に見入ってしまう。

いつも使う大通りに平行して並ぶ光や遠くに見えるビル街に浮かぶきらびやかなあかり。

「…贅沢だね。
毎日こんなに綺麗な夜景が見られるなんて」

視線はずっと夜景を見ながらぼんやりつぶやいた。

本当にうらやましいな。
私の部屋は7階っていうのもあるけど、周りには階数の高いマンションが結構あるから夜景なんて楽しめないから…。

「親父は…この部屋以外にもいくつかマンション持ってるんだ」

淡々と語りだした昴に視線を移すと、側にあったテーブルにグラスを置いて、木でできた椅子に腰かけた。
どうしようかと一瞬悩んだ後、私も昴の隣の椅子に座った。

ふっと息を吐いた昴は、

「どのマンションでも住んでいいって言われた時に、一番にこの部屋に決めたんだ。

…どうしてかわかるか?」