プラチナの誘惑

体を重ねる夜に感じる虚しさから目をそらしたまま半年ほど付き合った頃ニューヨークに二人で旅行に行った。

とにかく買い物がしたい、という優美の気持ちについていく気もなかった俺は、一人で美術館を回って穏やかな時間を過ごしていた。

もともと設計やデザインを仕事にするくらいに好きだった絵や美術作品を見るのは本当に幸せな時間で、そう感じる度に優美との未来は考えられなくなっていた。

誰でもいいと捨て鉢になっている心は、唯一正直に

「玉の輿」

という欲を話す優美を受け入れているつもりでいても、どこまでを自分に
強いればそうする事に無理を感じなくなるのかわからなかった。

悩む事さえ面倒で、とりあえずの優美との時間を過ごしていた俺の目に入ってきた彩香の姿。

周囲の雑音を一切排除して、柔らかな微笑みと共に絵を見つめる彩香。

手に入れたいと、受け入れて欲しいと。

一瞬で堕ちた。