誰もが名前くらいは聞いた事のある会社で社長をしている親父。
創業者である俺の祖父の後を継いで以来、かなり会社の規模を大きくしている。
兄貴が後継者としての資質を持っていた為か、子供の頃から俺は自由に将来を考える事ができた。
親父にしても、俺が設計の世界で伸び伸びと力を発揮している事を喜んでいると思う。
父親の会社と俺には、未来に強い関係はない。
それなのに。
世間や周囲の人の目はそうは思わない。
学生時代から今までずっと、社長の息子っていうラッピングに包まれて生きてきた。
社会人となった今は、自分の能力と努力のみで判断される設計の世界で生きているせいか、意識する事も少ない。
それでも、どんなに仕事で成果をあげたり、父親から離れ自活をしても、近づいてくる女が望む俺の姿は、大きな会社の社長の息子。
加えて見た目もいいとなれば。
ただそれだけで、俺の内面は関係なくアプローチされる。

