プラチナの誘惑

落ち着いた声で、小さくため息をついた昴。

私の手をそっと掴む手は少しだけ震えているようで、何だか切なくなるけれど。

さっき…逢坂さんの家で今更気付いた自分の気持ちを知られるのも怖いし…慣れてなくて。

ただただ黙っていた。

「聞きたい事あるんじゃないのか?」

相変わらず落ち着いた声。

加速する車は大通りを抜けて左折…そしてしばらくすると私の住むマンションに着くはず。

…なのに。

昴は車を左折させる事なく直進したままで。
見慣れない景色がどんどん流れていく。

「昴…道違うよ。こないだ送ってもらった道忘れた?」

心細い気持ちのままで小さく呟く私にちらっと視線を投げた後、何も問題はないみたいに

「このまま俺のマンション行って、明日の買い出しに行けば楽だし」

「…は?」

「言っただろ?
見えない所にキスマークつけるって」

柊さんと交わしていた昴の言葉にただでさえ揺れてる私の気持ち。

どこまで…。
掴むんだろ。