私ふたり。

「何してるの?」
相変わらず、座り込んでいるカナの前に現れたのは、指導医の池田だった。

「今、売店に行ってきたんです」
うつむくカナに代わり、菅野が応えた。

「入らないの?」
池田のことだ、カナがぐずっている事くらいは分かっているはず。
「入るよね、カナちゃん」気まずい状況に、菅野が最後の助け船を出した。

「いや」
菅野は苦笑いで、池田の表情を伺う。

池田は、カナの脇を抱え無理に病棟に入れた。

「あらら…」
菅野は、少し呆れた顔で笑っている。


売店から戻るなり、カナは不機嫌になった。

「カナちゃん、売店に行けなくなるよ」
菅野はそう言って、ナースステーションに入っていった。


「カナちゃんカナちゃん」カナの部屋に来たのは、隣の部屋の夏恋だ。
夏恋は小学3年生で、暇になるとカナのもとに来る。
「夏恋ちゃん、後でね」
不機嫌なカナに遊んであげる余裕はなかった。
聞いているのかいないのか夏恋はベッドに上がりこんできた。

「夏恋ちゃん!」
怒っているのが分からないのか足で顔をつついたりやりたい放題だ。