私ふたり。

カナは何度も自分にそう言い聞かせた。


「カナちゃん気分どう？」
部屋に入ってきたのは、菅野だ。

「大丈夫」
カナは菅野に笑いかけた。
「売店でも行く？」
「うん」

カナは菅野の後について、売店に向かった。

菅野の誘いで、散歩した帰りに売店に寄ることになった。
屋上から外に出ると、いっきに寒くなった。
「寒いね、大丈夫？」
「平気」

寒いといいながら、菅野は小さくなった。

「白衣着ればいいのに」
菅野は、普段あまり白衣を着ないので、医者には見えない。
「そうすればよかった」


「好きな人いないの？」
菅野の唐突な質問に、カナは驚いた。
「いるよ」
「いい人早く見つけて」

まだ17の少女に、早く結婚相手を見つけてと言わんばかりの言い方に
カナは照れくさかった。

「クリスマスか」
明日は、イブ。菅野に、クリスマスなどは関係ないが12月のこの寒さで
クリスマスシーズンを再確認させられたようだ。
「そうだね」
カナは、今年も病院かとため息をついた。


そんな会話をしているうちに、売店についた。
「いってらっしゃい」
菅野は売店前の廊下で待っているつもりらしい。

一人カナは売店に入り、お茶を一本買った。
「お菓子食べないの？」
「いらない」

菅野はへーと少しつまらなそうな顔をした。




カナは、閉鎖病棟の入り口前で座りこんだ。

「カナちゃん入って」
カギを開けながら、菅野がカナを促す。
「入りたくない」
菅野は少し困った顔をした。
「後5分ね」
そう言って菅野は、またカギを閉めソファーで新聞を読み始めた。
この様子だけ見ると、もはや医者ではない。
でも、菅野のちょっとした優しさがカナは好きだった。


「最近の気になるニュースは？」
カナは少し考えて、
「先生は？」と聞いた。
「僕、テレビ見ないからな」
菅野は時計を気にしながら応えた。

「後1分」
カナは聞いてないふりをした。


菅野は立ち上がり、」カギを開けた。