「外に出たい」
カナは先ほどの医者に話しかけた。

「今のカナちゃんの状態で外には出せないよ」
「カナちゃんのここは何科かな?」

カナは検討もつかない質問をされ、不機嫌な顔をした。

その医者は、少し険しい顔をした後、にっこり微笑んだ。
「ここは、精神科。僕は君の主治医の菅野」
「今のこの状況が分かるかな?」

カナは、施錠された入り口に視線をむけた。
「カナちゃんその内分かるよ」


カナのやり場のない苛立ちはピークに達し、部屋に戻るとその苛立ちは自然と涙に変わった。



カナはそのまま眠りについていた。
「カナちゃんご飯きたよ」
看護師の声で目が覚めた。欠伸をしながら伸びをしたカナは箸を持って食堂に向かった。


食堂に行くと、ニコニコしながら真悠佳が手招きしている。
「カナちゃん、ここここ」
小走りで真悠佳の隣に行き席に座った。

「思い出したんだね」
カナの顔色を伺いながら真悠佳が言った。
「何を?」
「さっきまで記憶なくなってたじゃん」

真悠佳はそう言われてようやく自分が先ほどまで、解離になっていた事に気がついた。

「全然覚えてないよ」
「だよねぇ」
カナは真悠佳と顔を合わせて笑った。


菅野がナースステーションから出てきてカナの様子を見にきた。
「カナちゃんの住所は?」「宮崎市****町******マンション****203」
カナは得意気に答えた。
ニコッと笑い少し安堵した様子の菅野。

「じゃご飯たべてね」とカナの肩を軽く2回叩いて病棟から出ていった。