罵声が聞こえる。
死ね、死ね、死ね…
何回も何十回もクラスの全員が手拍子をしながら罵声を浴びせる。


耳をふさいでも、聞こえてくる罵声。


「うるさい!」

自分の声に驚き、目が覚めた。頬が冷たく濡れているのを感じた。

「…涙」

夢で泣いてもどうしようもないのに。


「いやな夢だな」

現実でないなら、いい。そう思う余裕はない。

学校に行けば、もっと酷い仕打ちに遭うのだから。


時刻は、夜中の3時を過ぎていた。

携帯に着信ありの表示。
母からだ。

「なんで病院…」
頬は寒さと涙で冷たさを増した。


私は自分が病院にいる理由が分からなかった。

翌朝、看護師は私の質問に奇妙な顔をした。
「カナちゃん、あなたは入院中よ」
そう言うと、医者を呼びに言った。


「名前は?」
「玉置カナ」
医者は質問を続けた。
「僕の名前は?」
「知りません」

「ここは?」
「病院です」
私は真面目にこの質問をする医者に頭にきた。
だって初対面の医者の名前を知るわけがないし、見ればここが病院だということくらい一目瞭然である。

「カナちゃんの住所は?」「○○市…えっと…」
住所がどうしても思い出せなかった。

「カナちゃんは、入院中。病気なんだよ今は、休憩中だよ」

私が病気…。