突然、雫は奥の物置部屋に入った。
「何しに行ったんだ……?」
あいつは(俺にとって)意味のない行動をすることが多い。
突然行動しだすから予測できない。ある意味で危険人物だ。
おれはリビングのソファーに座り昨日買ってきた雑誌を開き読む。
がちゃがちゃと隣の部屋から聞こえてくる。
ちゃんと片づけるんだろうな。
「コーヒー、がない……五十嵐に買ってきてもらうか」
《ピリリ》
雫から電話がかかってくる。
またくだらない用だろ。
てか、なんで隣の部屋なのに電話かかってくんだ?
「何で俺に電話かけんだよ、馬鹿」
「ィギャー!!!出たー!!!」
「人を幽霊みたいに言うなー!!!それよりビデオはどうした、ビデオ!!」
「ミカミ、ビデオどこ仕舞ったの?」
「お前、前に言ったろ?」
溜息混じりに答えると、雫の横を通り過ぎた所にある小さな棚の引き出しを開けた。雫にビデオテープを見せる。
「ここだろ?」
引っ越して来てすぐ、雫に言ったはずだけど。
―『いいか、雫。録画用のビデオテープはこの引き出し。で、録画し終わったビデオテープはこっちの棚ん中。分かった?』
『あい!』
『…マジで分かった?(怒)』
『はい、分かりました…(汗)』―
……やっぱりこいつ、忘れてやがったな……。
「あーそっか、そこか!」
「ったく、忘れんなよなぁ」
「あは♪さーせん♪」
「…ぶっ飛ばすぞ」
「さーせん…」
「よし」
まぁ。何がともあれ。
これで雫の気が済んだのならいいだろう。
っていうかビデオがなきゃ撮れないか。

