そういえば、飛夏羽には何があったのだろうか。
それは飛夏羽の過去を思い出させる物だった。

 翔太の家に帰ると、男たちが飛夏羽を出迎えた。

 その中に居る一人の男の子が飛夏羽の手に手錠を掛けようとしたのだ。

「な、何!?」
「申し訳ありません。命令な物で…」

 男は不気味に笑いながら飛夏羽の腕を後ろに回した。

「やだ!離して!」

 飛夏羽は男の手を振り解いて翔太の家から逃げ出していった。

 飛夏羽の過去と言うのは、飛夏羽が2歳の頃に病院に行った時に起こった事
件だ。

 病院の医師がまだ幼い飛夏羽を手錠を掛けて倉庫に閉じ込めたのだ。
しかもその翌日、ぐったりとしている飛夏羽に目隠しをし、洋服を脱がせてセ
クハラをしていた。

 幸い飛夏羽の泣き声を聞きつけた他の医師が駆けつけ、飛夏羽を襲った医師
は逮捕された。
その為飛夏羽は病院に行く事を嫌い、男恐怖症にもなっていた。

 そこで男恐怖症を克服してくれたのは優都だった。
優都は飛夏羽の全てを受け入れ、優しく接してくれたのが飛夏羽の心を傷を癒
す最高の鍵となったのだろう。

 そして飛夏羽は走りに走り続け、川岸で足を滑らせそのまま倒れ込んだの
だった。

「…帰…らなきゃ…私が…っ…私が死ねば…良いの…かな…」

 飛夏羽はゆっくりと立ち上がるとふらふらしながら翔太の家へと戻って行っ
た。

「飛夏羽様、随分とお帰りが遅いようで…」

 飛夏羽は男から目を逸らした。

 其処に真吾が入って来た。

「おや、飛夏羽ちゃん。その制服は誰のだい?」
「…これは…」
「俺のだよ親父。」

 翔太が飛夏羽の横に来た。

「…翔太…」
「親父、これからは俺が飛夏羽を見張る。だから絶対に手ぇ出すな。」

 翔太は真吾を睨みながら飛夏羽を部屋に連れて行った。

「…反抗期か。」

 真吾は翔太を見て不気味に笑った。