「…そうだね、それが…一番良い。迷惑ばかりで…ごめんね。」

 結果は勿論「OK」だった。

 飛夏羽は優都から目を逸らすと、俯いたまま優都の横を何も言わずに通り過
ぎようとした。

 優都は何か言おうとして振り向くと、地面に飛夏羽の涙が零れ落ちていた。

 優都も堪えていた涙を零し、強く飛夏羽を抱き締めた。
「…止めて…止めて優都!放してよ!」

 飛夏羽は泣きながら必死で優都の手を放そうとした。

 優都の力は強く、飛夏羽は優都の手を放す事が出来なかった。

「…放したくなんかないよ…最後ぐらい…貸してよ…」

 飛夏羽は涙を零しながら優都の手を握り締めた。
優しく…それでも強く…

 それからしばらく時間が経ち、優都は飛夏羽を放すと後ろを向いた。

「…ごめん、行って。ありがとう。」
「…こちらこそ…じゃあね。」
「…バイバイ。」

 飛夏羽が走って行った瞬間、首からネックレスが外れ、地面に落っこちた。

「あ、飛夏羽…これ…」

 優都は飛夏羽のネックレスを拾い、飛夏羽に渡そうとした。
飛夏羽はそれを優都の手に握らせ、後ろを振り向いた。

「…優都に…あげる。私が持ってたら…何て言われるか…分からないから…如
何したって良い…寧ろ捨てて?思い出なんて…何も残したくない…」

 飛夏羽は零れ落ちる涙を拭きながらゆっくりと歩いて行った。

「…じゃあね、飛夏羽…ちゃん。」
「バイバイ…優都君。」

 こんな事は今までに無かった。お互いが呼び捨て呼び合わない事は…

 優都は飛夏羽のネックレスを握り締めポケットに入れると学校へと戻って
いった。