廊下に出ると、翔太以外のメンバーが集まっていた。

「翔太が飛夏羽を物にした。それは知ってるよな?」

 竜牙の急な質問に、戸惑いながらも優都は頷いた。

「これで良いのか?あいつに飛夏羽…盗られても良いのか?」
「…良い筈…無いです…」

 優都はカタコトな敬語を使って小さく呟いた。

「…でも、今の俺には…」

 飛夏羽を守る事が出来ません。そう言おうとした所で、竜牙が優都の胸倉を掴
んだ。

「そんな事言ってる場合かよ…お前、もしも今ここで飛夏羽を守らなかったら…
飛夏羽は政略結婚させられるんだぞ?」

 竜牙の発言に、全員が絶句した。

 優都は頭の中が真っ白になり、目を見開いて竜牙を見つめた。

「結婚…飛夏羽が…何でだよ…」
「ほらよ。」

 竜牙はポケットからナイフを取り出し、優都に握らせた。

「な、何?」
「これで殺せよ。あいつの事。」
「何言ってんだよ!?仲間なんだろ!?」

 竜牙は舌打ちをして、優都のナイフを奪うと優都の肩を傷つけた。

「…何すんだよ!」

 竜牙はにやけながら肩を押さえる優都を見た。

「ナイフってのは…こう使うんだよ。」

 竜牙がもう一度ナイフを振り上げた時、李麻、零、純の3人が優都の前に立ち
はだかった。

「優都に何するんだよ!」
「優都君…大丈夫?」
「う、うん…」

 李麻は優都の前で腕を広げた。

「優都は傷つけさせないから。」
「くすっ…女に守って貰うのかよ。」

 竜牙は笑いながらナイフをポケットに仕舞い込んだ。

「一寸あんた達…何やってるの!?」