「いらっしゃい、なに飲む?」


「ん~……取りあえず烏龍茶」


「誰か待ってるの?」


「一応、彼女をね。」



今日もこのバーのカウンターで客の恋沙汰を聞く。
毎日毎日。


「何時に待ち合わせ?」


「9時にここに来てって言ったんだけど…」


客がしている腕時計は、9時15分を指していた。
よくあることだ。
≪彼女≫が時間内に現れないことなんて。