『なおくん、ちゅーしよっ』


幼稚園の年中の頃、近所の公園にある、家の形をした遊具の中で、紗耶香が言った。


『おにいちゃんが、ちゅーしたらけっこんできるっていってたの!』



紗耶香の兄貴は(俺の姉貴も)俺らの2歳上だから、当時は小1で、そういう話が好きな年頃だったんだろう。


純粋な紗耶香はそれを真に受けて、俺にそう言って来た。



『ちゅーはおとながするもんだよ。

おっきくなったらしよ?』


俺はなんか恥ずかしくて、それを拒んだ。



『やだっ!!

さやか、なおくんとけっこんしたいもん!!』


甘えん坊で泣き虫な紗耶香は、目を潤ませながら言った。



紗耶香が甘えん坊で泣き虫なとこは今と変わってない。