紗耶香の可愛い笑顔が好きだ。


すごく。



だけど…


『つか、明日から自分でお茶5本くらい持ってくからさ、俺んとこは来なくてもいいから、濱口先輩のとこ行けよ』


俺はもう1本のペットボトルの蓋を開けながら言った。



紗耶香はいつも休憩時間になると、まず俺にお茶を届けて、10分くらい話してから、濱口先輩のとこに差し入れを持って行く。



俺は体育館裏で同じ1年の部員と、濱口先輩は校庭で2年生達と昼飯を食ってる。


だから、きっと濱口先輩は、紗耶香が俺のとこに来てる事はたぶん知らない。



後輩の俺としては、いくら幼なじみとはいえ、先輩の彼女から差し入れをもらってることがばれたら気まずい。



それに…


『好きな女が他の男といるとこって、あんま見たくねぇじゃん。

俺に差し入れしてるとこを先輩が見たら、良い気分しないしょ』


俺だって、紗耶香が濱口先輩といるとこは見たくない。



紗耶香が濱口先輩のとこに行く姿を見送るのも、ほんとは辛い。