幡悠大学は、大きく分けるとキャンパスがふたつある。

あたしやアキのいる、理学部や経済学部、あとは工学部や教育学部などが集まるキャンパスが、ひとつ。


そしてもうひとつは、雄太のいる医学部と、歯学部があるキャンパスが――2キロほど離れた場所にある。



だから雄太とは、大学で顔を合わせることは滅多にない。

アキちゃんとあたしは同じサークルだが、キャンパスの違う雄太は、医学部キャンパスの方で活動するサークルに入っている。



だからもちろん、雄太と――ひとみ先輩の間には、面識はない。

おかげで雄太には、今のこの状況を知られずに済んでいる。



きっと雄太なら、このことを知ったとしても――顔色ひとつ変えずに、あたしのそばにいつづけるに違いない。


雄太にこれ以上、いらぬ心配をかけたくなかった。



付き合ってみて、

雄太はあたしより甘えん坊だけれど――あたしの何倍も、強い人だった。


穏やかな瞳の中に――ただならぬ焔をたたえた人だった。



その焔に、あたしは幾度もドキリとさせられる。