しばらく、何も言えなかった。


ハルの言う「大好き」が、小夏と俺では意味が違うことに気づいたから。




「イチ先輩と話がしたくて、小夏先輩のことだとよく笑ってるから…私は先輩から見て“いい子”になりたかったんです」

「…だから、小夏の教科書盗んで俺に返す、ってことか」




そうすれば、小夏に小さな嫌がらせが出来て、さらには「見つけました」と言って俺からの自分の評価をあげることもできる。




「クッキーもわざとです。教科書2冊とシャーペンも、持ってます。イチ先輩に渡すつもりでした」




「ごめんなさい」と言ったハルの手は小さく震えてた。