俺と反対の方に走って行く“誰か”。


だけど、遠くなっていくその後ろ姿には見覚えがあるような気がした。

ん?と思ったけど、普通に考えて理由がないし気のせいだなとすぐに思い直して、俺は玄関まで急いだ。





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次の日、小夏の世界史の教科書と、置いていたシャーペンがなくなっていた。

世界史は選択科目だから移動教室なわけだけど、昨日は授業はなかったと小夏は言う。


「前からなかった、とかじゃねーの?」という太一の言葉に小夏は首を横に振った。




「小夏ちゃん、ちゃんと思い出してみて」

「だって、昨日のお昼くらいには見たはずだもん。絶対」




小夏の言葉にウソはないと思う。

教科書は立て続けに2冊もなくしたからな。
1冊は戻ってきたけど、最近は特に注意してたのを見てた。